「赤い薔薇ソースの伝説」というメキシコ映画をとっても久し振りに観ました。多分、最後に観たのは10年以上前で、今回で3度目のような気がします。それもあやふやでよく覚えていないのですけど、今回は初めて字幕無しのスペイン語で観たせいなのか、それとも、多少なりともメキシコの勉強ををかじった後に観たせいか?または、最近この映画を観た友だちのレビューを読んだ影響なのか?これまで観た時に受けた印象とちょっと違って、改めて新鮮な気持ちで楽しむことが出来ました。
映画の舞台はメキシコの革命時代のアメリカの国境に近いメキシコの割と裕福なランチョ(大農場)。末娘は死ぬまで母親の面倒を見なければならないというしきたりのある家庭に育った主人公ティタが、愛する人(ペドロ)との結婚が許されないまま、一度は別の人と結婚しようとするけれど、結局年をとっても同じ人を愛し続け、最後は結ばれるという、ストーリー自体は何処でもありそうなお話。しかし、このストーリーを飾るお料理や革命時代の歴史、フィエスタ、音楽、階級社会、家族愛、感情表現、そして女性の役割など、ところどころにメキシコ文化が顔を覗かせる、かなり上質の映画だと思います。
また、これも私はメキシコチックと思ってしまうのですが、シリアスなシーンのところどころに、思わずプッと噴出してしまいそうな、コミカルなシーンが埋め込まれていること。例えば、映画の前半で、ペドロとティタの姉が結婚することになったという知らせを受け、ショックで食べ物も喉に通らず、寝つけもしないティタが始めた編み物は、その後映画の中では、編んでいる姿はそれほど映らなかったのに、ティタがアメリカの医師に預けられるためにアメリカへ馬車で旅立つ時に彼女の肩に掛けた毛糸のショールが恐ろしほど、どこまでも長くてそれを引きずるシーンなどはお最高でした。どれだけ彼女が悲しみ、苦しんだかという意味がこのショールの長さに込められているはずなのに、それを面白おかしく表現しているところは本当にお見事です。
それから、この映画で忘れてはいけないのは、「お料理」の存在です。台所で生まれ、お手伝いのナチャになついて台所で育ったティタは、お料理に自分の感情を込め、それを食べる人に伝えることが出来るのですが、お料理ってすごいパワーを持っているのだなあと改めて考えさせられたり。笑 ちなみに、この映画で出てくるお料理全てが、今テーブルに並べられても見劣りしないほど美しく、美味しそうなものばかりというのも驚きました(映画の時代背景は20世紀後半から21世紀前半という設定)。メキシコ料理の歴史の深さや、お料理を大切に思う気持ちが伝わってきます。特に、チレエンノガタ、とても好きなんですけれど、自分でも作れるようになりたいと、真面目に思っちゃいました。笑
長い感想文になってしまいましたが、私は同じ映画を何度も観るということは多くないのですが、この映画は、きっともう一度観たいと思う日が来るのだろうと、感じているとても大好きな作品です。大きなレンタル屋さんへ行けば、置いてあると思うので、ご興味のある方は是非ご覧になってください。